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クリエータの話(続き)

【 4 「形」とその機能(動き) 】

 

  動く「もの」には動く「機能」があります。その動く「機能」を陸上生物の動作や移動方法から観察すると、いろいろな仕組みや知恵が見えてきます。陸上動物と人間が開発してきた動く「もの」との機能上の大きな相違は「くるま」でしょう。 動物は連続的な回転運動はできないので「くるま」の機能はありません。よって動きはすべて往復運動で達成されます。「くるま」は古代人間社会での大発明品ではないでしょうか!

 

● 地面の摩擦抵抗との戦い

 水中から地上に進出してきた生物は、酸素を取り込む気門や肺の発達と共に、獲物を捕食し、繁殖し、敵から逃れるために自身を移動させる手段の確立に非常な努力が払われたと思われます。それは地球重力!そうです、地面摩擦抵抗との戦いです。これを探求し続けると地球生物誕生の一つの壮大なドキュメンタリー・ドラマが出来上がりそうにみえますが、専門外の者にとっては誇大妄想の範疇を超えられるものではありません。ここではよく観られる昆虫や動物についてその移動の方法を簡単に観察してみます。

 

● 昆虫の6本足

 節足動物のムカデは節ごとに一対の脚を持ち、脚を波打たせながら前進します。多くの節足動物では脚が発達して胴体を持ち上げられると、そんなに多くの脚は不要で退化していき、昆虫では6脚になったのでしょう。即ち、胴体位置を決めるには、写真撮影時のカメラ三脚のように3本の「足」が最低限必要です。そしてその3本の脚で定まった胴体位置を移動させ姿勢を変化させるために、もう一対(3脚)の脚が必要となります。先ほどの「蟻」の6脚による胴体移動を考察すると、まず3本の足で胴体位置を決め、残りの3本の足を次の位置へ、その位置で3本を固定して胴体を移動させ、最初の3本を更に次の位置へ動かすことで前進することができます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                           6本脚による移動    

 

 勿論、蟻の足は多関節であり、歩行する場合にでももっと多彩な脚の動きがあるようですが、そこまでの観察は出来ていません。少なくとも3本の脚で体の位置決めができ、さらに4本目の脚で胴体の姿勢角を変化させることができるようです。その時、残った前足2本は自由に動かすことができ、獲物を捕らえ、身繕いをし、更に外敵に対して武器となり得るのです。

● 魚から2本足歩行へ

   魚が地表に進出できた時、胴体が横倒れしないように胸鰭と腹鰭の4枚の鰭を足に発達させたと考えると、トカゲや鰐に見られるように地面に接した胴体や尾を入れた5本足(尾を入れた3つの足で安定させ、残り2本の足を動かす)で前進していると考えられます。しかし尾や胴体は地面との摩擦抵抗が有り、とても高速には走れない。そこで胴体を持ち上げ、地面に接触しないようにする必要があったのでしょう。そこで胴体への足の付け方や動かし方が種々進化していったと思われます。

 

 

 

 

 

                                                                                                     

 

 

 

 

                         “肺魚”( 鰭が脚のように・・・・・・)                    トカゲ?、イグアナ?

 

  また、恐竜やカンガルーのように、2本足と尾っぽで立ち、前脚がフリーとなって「手」になり、捕食や武器として作業ができた一方で、尾が体の安定に重要なツールになったようです。

                                                                                                     

 

 

                                                                                               

 

 

 

 

 

 

 

 

            

      恐 竜:尾を地面に着けた想像画はめったにお目にかかれない。

          尾は歩行や走行時には重要な姿勢安定装置となっているようです。

                                                      カンガルーは完全な3本足立ちです。

安定制御機能の発達

  四足の哺乳類を代表して、競馬などで「馬」を観察すると、4本の足で立ち、通常歩行時は3本、歩行速度が上がると胴体の重心移動を考えて2本で安定走行できる機能、即ち体の安定制御能力が発達しているのが判ります。より高速になると、瞬時には1本の脚で体を支えているだけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           馬の歩行(三本の足で立つ!)                    馬の疾走の連続写真(一瞬は一本脚)

 

 しかしながら、4脚あれば3足で体を支えて位置決めするのが常なので、足場が平面でない場所、すなわち急な”坂”や”崖”、現在の“階段”、果ては”木登り”においては胴体姿勢の保持と位置決めが困難となります。そこで後足二本の直上に胴体重心を置き、前足の二本を”腕”として体の傾斜を支え転倒を防ぐ機能を持たせると、凸凹の地表面や”崖”、”樹木上での移動”が容易となります。更に哺乳類では垂直に支えられたため大きく成長できた頭脳によって安定制御機能がさらに高度に発達し、二本足歩行、走行が可能となったと考えられるのではないでしょうか。

 

 最近では4足歩行や2足歩行等の多種のロボットが研究開発されています(You Tube参照)。これらロボットの走行と動物の走行とを比較観察するのも非常に興味があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

            ボストンダイナミクスによって                 日本の二足歩行ロボット

           2005年に開発された四足歩行ロボット                  「アシモ」

                   「Bigdog」

 

【 5  水中や空中での動き 】

 

  水中生物の形状や空飛ぶ鳥類の飛行形態は、船や飛行機の設計に大きなヒントを与えてくれています。但し、ここでも回転運動の有無が生物と人工物の動きの上で大きな差が出てきます。水中で前進すためには「魚」は胴と尾翼を波打たせて推進力を作ります。鳥は羽ばたきです。一方、人間が作るものは胴体や翼を複雑に動かすことは出来ません。原動機によってエネルギーを回転運動に変え、スクリューやプロペラやという推進装置を開発してきました。また「烏賊」や「蛸」のように、吸い込んが水を噴出させてその反動で進む方法は、ジェットエンジンやロケットエンジンの素朴な先祖でしょう。

 

 

● 魚類の動き

 鯉や鮒、魚屋さんで並べられている鯵、鯖、鮪、鯛等 ”魚”の尾鰭(おひれ)は、飛行機で例えると垂直尾翼であり、且つ推進装置です。魚が方向転換や旋回する場合に、縦長の胴体や尾鰭を進行方向に対して角度を持たせると容易に横力を作ることができるので、胴体を傾けないで水平旋回できるのが特徴的です。さらに魚が胴体を傾けて泳いでいるのを見たことはありませんが、そこは眼が”魚眼レンズ”です、視野が広く、胴や頭を傾けて視る必要がないようです。

 水中での上昇・降下とピッチング(頭の上げ下げ)は主に体内の浮き袋の空気量調整で行っています。人工物では没水艇、即ち潜水艦や空中における飛行船の仕組みに相当します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          池 の 鯉               魚の上昇・下降方法           飛行船の上昇・下降ピッチング制御方法      

     尾鰭を振って方向転換中中        要は同体積の水との重さ比べです。          要は同体積の空気との重さ比べです。

 

 

● 海豚の泳ぎ

 海豚(いるか)や鯱に水中を高速で進むための「形」と「機能」を多々見ることができ

ます。尾鰭は魚類と異なり、後足が進化した推進装置です。飛行機での水平尾翼にも相当

します。水面に鼻を出して呼吸する際にも水抵抗を最小限にするため、鼻孔が頭上近くま

で移動するほどの遺伝的変態を繰り返した胴体の形状は、水の抵抗に対して最適な形にま

で進化しています。

 胴体は魚のように縦長ではなくむしろ円に近いほうで、そのしなやかな胴体と尾鰭によ

り強力な推進力を発生させます。さらに胸鰭、背鰭によって自由軽快な水中の動きがもた

らされています。胴体表面は水との摩擦抵抗が低減される皮膚をしていて、これは人間が

作る船舶や潜水艦の水抵抗を低減する特殊な塗装の開発の参考となっています。

                                                     水中運動に適した”海豚”の形態

                                                 

 

● 飛行する昆虫

  カブト虫等に代表される飛行できる昆虫類は、胴体外側形状を甲殻や硬い皮膜で構成し、その内部に内臓や筋肉をいれています。これは大きさの割に質量が軽くできるモノコック構造様式で、現在の自動車、電車、飛行機の胴体等の構造様式に多用されています。また、昆虫の飛行においては、空気の粘性の影響が大きく、羽で空気をかき乱すときの粘性抵抗の反力で飛んでいるようなものです。しかし左右一対のみの羽の羽ばたきでは上下振動が発生します。その振動(胴体が上下する)を打ち消すために前後2対の羽を備えていのではな

                                        いでしょうか。高速度カメラでトンボの飛行を

                                       観するとよくわかります。

 

                                        一方、”蝶”の飛行は”トンボ”と異なり、左右二

                                       対の羽を一緒に羽ばたかせています。大きく羽ば

                                       たくことにより、翼面に一種の渦を作り揚力を得

                                       ているらしく、これは昆虫類にあってはより進化

                                       した飛行方法であると云えるそうです。

                                       

     トンボの飛行(前方から)      トンボの飛行(後方から)

                

 鳥類の飛ぶための工夫

 鳥類は羽ばたきで揚力と推進力を同時に得ています。羽ばたきの方法は小さい「ハチドリ」から大型の「コンドル」までその大きさと重さによって異なり人工物ではマネのできないところですが、翼自体が”折畳み翼”であり且つ”可変翼”であることは大いに参考になります。(人類発明の飛行機はプロペラやジェットによる推力で前進し、固定翼で揚力を発生させます。)

 

 鳥類は眼のある頭部を極端に自由に動かすことができ、飛行時等に急旋回のため胴体を大きくバンクさせても、眼や頭はとらえた目標物を追従し視野内に留められます。また着地時の大迎角でも白鳥や鶴の着地で観られるように頭を水平に保ち、着地点を凝視しているのが良くわかります。

 

 鳥類が飛行をするために軽量化の努力が必要です。羽根表面は雨水などをはじき(撥水性)、その骨は中空で軽くてしなやかです。食物は栄養価の高い種子や肉など、消化は素早く、そして小便と大便を一緒に排泄、等々

 

 長距離、長時間対空のためには、アホウドリに見られるように細長い(アスペクト比が大)翼を持っています。しかし離陸が下手で坂を下って速度をつけ空中へ浮かび上がる必要があります。

 鳥類で最も高速なのが「アマツバメ」と記憶しています。高速から低速までの速度変化に対応する可変翼を装備している「鷹」や「ハヤブサ」であり、フクロウは左右180度近くまで回転する頭部と、羽ばたき音を出さずに低速飛行のできる翼が特徴です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            アホウドリ(長大な翼)                               アマツバメ(三日月翼?)

                                                       ハヤブサ(高速飛行時)

                                                                                                                                        

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                フクロウ(前縁に小翼が見られる)                     ハヤブサ(低速飛行時)

                                                            

 

 種の飛行

 移動手段を持たない植物は、繁殖のために”種”をより広範囲、より遠方に落とす巧妙な工夫をしています。地面近くで開花するタンポポは、その種を綿毛にぶら下げることにより、風に吹かれて空中を漂いかなりの遠方まで浮遊できます。カエデ(もみじ)や松の種は、一枚の羽が微妙な角度で種についており、重心を中心にちょうどヘリコプターのオートローテーションのように回転しながら落下するため沈下率が小さくなり、親木の根本からより離れた位置に着地できます。さらに、インドネシアのボゴール植物園に生息する「アルソミナ」に至っては、まるで無尾翼のグライダーの形態をしており、空中を滑空してより遠方への着地を狙います。

 

 

 

 

 

 

 

 

      タンポポの綿毛          松の種子            カエデの種(ペア)            アルソミナの種

 

 

    次回は 【                】 と称して、逆に人工物から観察してみます・・・・・

 

 

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